U.エーコ/河島英昭(訳)『薔薇の名前』東京創元社

ネタバレ注意。

中世イタリアの僧院、迷宮構造の大文書館の謎と、それをめぐって起こる連続殺人を描く長編。

ミステリとしての構造…特に犯人の造形、ロマンティシズムとペダンティズムとオカルティズム、歴史学と宗教学…ストーリィを取り巻く要素を取り出してみたらどれもこれも非常に魅力的だけど、それを連ねて読んだらいまいちテンションの上がらない読書になってしまった。

大部ではあるが冗長というのとも違って、没入しきれないものをずっと感じていた。小学生みたいな感想だがまず登場人物の名前が憶えきれない。この感じで一覧表がないのは、訳者のエンタメ拒否路線によるものなのかしらん。このぐらいの文学泰斗にしか訳出できないレベルの作品とは思うけど、高尚な文学たらんとする心意気が読み難さに繋がっているような気はするな。

中学の時じいちゃんに買ってもらって、読まないままに売って以来の初読だったから、思い入れ(?)のハードルがあったことは確かだが…文庫化したら再挑戦だな、『百年の孤独』も文庫化されるらしい世界だし、いつかは文庫落ちすることもあるやろ。

記録のみ。