ネタバレ注意。
大人になった「私」の、ピエール・ロチ、芥川から太宰へと至る「本の旅」を描く、「円紫さんと私」シリーズ。
もはや文芸評論、ビブリオ・エッセィを小説に仕立てているような感じだし、正直に言ってその高尚な文学趣味が鼻につく箇所がないわけではない。
でもやはり、このやわらかな感性と文体に心地よく包まれながら、連帯感と昂揚感に浮き立ってこの作品を読めるのは、ワタクシも愛書家の端くれであると自認してもよいのでしょう。
「変なもんだね。若い頃だったら、まず《ちゃんと返せよ》っていったのに。――でも、この年になると違うな。自分の好きだった本が、友達のうちにずっと置いてあるのも、悪いことじゃない」
(97p)
正ちゃんいいこと言うね! とか言いながら。
この作品の白眉は個人的に185p、「女生徒」と「待つ」の結びの照応。この美しさには震えたし、太宰を読まねばと思った。
さすがの名伯楽(?)だわ。
評価はB-。
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2017/10/12
- メディア: 文庫
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