岸田るり子『密室の鎮魂歌』創元推理文庫

ネタバレ注意。
女流画家の周辺で起きる失踪/殺人事件の謎を描く、第14回鮎川哲也賞受賞作。
うーん、ちょっと、つかかなり残念な出来だった。このご時世に密室トリックで新機軸打ち出せって無茶は言わないけど、それにしたって図版入れまくりの割に粗雑に過ぎるトリックだった。芸術や耽美的な愛憎を主題にしてる割に、人物造形も地の文章も簡素で味わいに乏しく、主題と筆質の乖離は居心地の悪いうすら寒さをもたらしている。ペダンティズムなんて望むべくもない。
とにかく出てくる奴らがどいつもこいつも、取るに足らない、くだらない人間に見えて興醒めだった。《四万十川の天然ウナギの蒲焼きを注文した。小ぶりだが、身が引き締まっていて美味しい。》(210p)とか、前後の脈絡からして必要性ゼロのグルメ描写で、ダメミスの必要条件を満たしてくるあたりは笑えたが。
評価はC−。