白井智之『人間の顔は食べづらい』角川文庫

ネタバレ注意。
食用ヒトクローンの生産が法制度化された近未来。政治抗争に伴う殺人や不可能状況下での生首出現、クローン工場でのテロ事件が連鎖する、SFスプラッタ・ミステリ。
素敵にグロテスクなSF設定だが、それが虚仮脅しとはならず、それゆえのロジックのツボが抑えられている。文章やキャラクタの造形と取り扱いにも、「クレバーなパンク」とでも言うべき感性が筋を通していて、好感をもって読んだ。東北舞台だし。
解決が若干バタつく印象こそあったが、デビュー作として名刺代わりには十分すぎる、先鋭にして充実の一撃。この後も評判の良い作が続くので、愉しみな作家です。
評価はB−。

人間の顔は食べづらい (角川文庫)

人間の顔は食べづらい (角川文庫)