青崎有吾『体育館の殺人』創元推理文庫

ネタバレ注意。
風ヶ丘高校体育館で起きた殺人事件に挑む、鮎川哲也賞受賞の裏染天馬シリーズ第一長編。

「密室なんて、破る方法は腐るほどありますよ。腐りきって土に還ってその上に森ができるくらいあります」
(139p、裏染天馬)

評判通り、志向された通りのロジカルなパズラ。その筋道だった論理展開で本格魂をアゲてくれました。体育館脱出のトリックがちょっとバランスを崩してリスキィな印象はあるけど、印象に左右される実現可能性なんて、このロジック世界においては俎上に載せるべきものではないのでしょう…引用した名探偵の台詞の通り。
キャラクタ小説風味や二次元ネタのくすぐりもイタくならない絶妙のところで、タイトル(本作および以降のシリーズの)からも感じるユーモアの魅力もあり、何より作風にズバリの清明な叙述が小気味よい、クレバーで洗練された佳作でした。
評価はB。

体育館の殺人 (創元推理文庫)

体育館の殺人 (創元推理文庫)