『ザ・マスター』

DVD。
第二次大戦後のアメリカ、ある新興宗教団体を舞台に、その教祖と、そこに紛れ込む、戦争後遺症の狂気を抱えた退役軍人を主軸に描くドラマ。
ポール・トーマス・アンダーソンらしく、南部の砂に煙った土着感のある映画。相変わらずあまりサービス精神の感じられない骨太な作品だけど、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』みたいに途中で意識を失うようなことはありませんでした。
それは個人的に新興宗教ネタが大好きだからってだけでもなく。この作品の「コーズ」のモデルはかの有名なサイエントロジーなんだけど、宗教絡みではそんなにぶっ飛んだ展開があるわけでもなくて。
月並みな感想ではあるけれど、それはやはり俳優陣の演技の充実に拠る部分が大きいと思って。ホアキン・フェニックスは見事に狂気を現出させていたし、エイミー・アダムスのあやうさが美しさに転化する表現も素晴らしかった。
そしてこの映画を観る最大の目的だったフィリップ・シーモア・ホフマンは、他の作品に比べて特に図抜けているわけではないように思ったけど、それでもさすがの存在感。それを大いに認める一方で、その不在は計り知れない損失だとは思うけど、寅さんレベルの記名性なので、何撮ってももうあんまり変わりなかったのでは…という追悼上映会にあるまじき感慨も。

ザ・マスター [DVD]

ザ・マスター [DVD]