森村誠一『忠臣蔵』講談社文庫

ネタバレ特になし。
お正月読書。
お正月と言えば忠臣蔵、ということで、おおまかな粗筋しか知らなかった僕は、史的興味も含めて愉しく読みました。
史実検証的な要素と、虚実取り混ぜた人物列伝、それを貫く質実な人物造形で大長編を引っ張りますが、後半はむしろそうした要素は後退しているように感じられます。代わって前面に出るのは、「武士道」なる異形の論理、それに翻弄される武士と、彼らに関わる人々の、不条理や哀しみといったもの。刃傷事件→取り潰し→雌伏期間→討入→切腹→(さらには)以降の権力闘争、と続いていく「元禄」の時代を描く中で、その中心にある論理の重みがこうして立ち顕れてくるというのは、作者の狙い通りでもあれば、また筆力の証明でもあるでしょう。
様々な登場人物、読者がまず好感を抱くのは山吉新八郎あたりだろうけど、俺は大野九郎兵衛がかっこいいと思います。赤穂藩士に生まれたならば、この役を謹んで務めさせていただきたく御座候。
そして最も感銘を受けたのは、堀部弥兵衛の遺言。かっこよすぎw
評価はB−。

忠臣蔵 (上) (講談社文庫)

忠臣蔵 (上) (講談社文庫)

忠臣蔵 (下) (講談社文庫)

忠臣蔵 (下) (講談社文庫)