本格ミステリ作家クラブ(編)『論理学園事件帳 本格短編ベスト・セレクション』講談社文庫

ネタバレ注意。
本格ミステリ03』の分冊文庫、前編。
これはなかなかに粒揃いでござったが、特に三編。
大山誠一郎「彼女がペイシェンスを殺すはずがない」。聞いていた高評に違わず、非常にスマートで美しくまとまった密室ハウダニットでした。惜しむらくは俺にカーの素養が欠けていることで、パスティッシュとしての妙味が味わえてないんだろうなーと。
西澤保彦「腕貫探偵」。こちらはホワイダニットの部分が美しい。西澤的なネチっこい心理描写と、ユーモラスな世界観の絶妙なカラミ、久々に読みました。西澤ファン自認しつつもこのシリーズ未読なので、本棚に全部揃ってるの手付けようかと。
青井夏海「別れてください」は助産師探偵シリーズの日常の謎日常の謎の例によってほとんどが推測と語りのロジックだが、その過程での心理の追い方が納得性が高くて読ませる。推測を飛躍と感じさせないスムーズな叙述作法に好感。
他の作品もそれぞれにキャラが立って、バラエティとクオリティ兼備の好編集でした。
評価はB+。