戦後混乱期、黎明の「女子プロ野球」に現れた「鉄腕麗人」、加納トメの一代記。
完全に偽史というわけでもないようだが、感触的にはそれに近い、「女子プロ野球」という架空史。それを題材にやりたかったのは、「野球マンガ」ではなく、完全に「女の一代記」だったんだな、という印象。もっと試合や戦術を練り込んだり、黒沢や入月の挿話を重ねることはできただろうに、それをしていない。割と序盤から、戦後日本における「対アメリカ」の、「大きな物語」をやろうとしている*1。
それはそれでアリだと思うけど、そうして後半浦沢直樹マンガみたいな展開になるんだったら、もっと人物造形、エピソード構築に細心さが欲しい。画は巧いから、そこから読めってことなのかもしれないけど、特に克巳や五十鈴の造形・モチベーションが薄いのが残念。五十鈴なんて最初はかっこよかったのに、なに考えてんだかもよく分からないまま存在感がどんどん希薄になっていく残念なキャラクタに。エピソードのトリガや決着も、なんか短絡的に感じられる場面が多かった。五十鈴の演説や克巳の手紙は泣かせたい場面だろうけど、全然泣けない。
でも画は巧いね。あまり好きな描線ではないけど、構図やコマ割の巧さ、醸し出される迫力は認めざるを得ない。女子はマッカーサー対面時のトメを除いてかわいくなかったけど、男子、つーか克巳はどのアングルもかっこよかった。前半の克巳、後半のトメ、かっこいい顔はどれも飯田響也みたいだけどw
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