折原一『黒衣の女』徳間文庫

ネタバレ注意。
なんだろう、いつもは「オヤジ臭いなあ」って拒否反応の出てしまう折原小説ですが、この作品はそう抵抗なく読むことができました。石川真介の忌まわしい記憶がまだ鮮明だからでしょうか。あれに比べたら、こんなの。
テンポよく進むスリラ小説の趣。記憶喪失の女性が中心人物で、一人称で進むメインのパートと、並列して描かれる何人かの男性(全員死亡w)。そこに絡められるのはいつもの人物・時系列錯誤、よく言う「折原マジック」。こういうのは「フランス式」なんでしょうか? シャプリゾとか読んだことないんでなんとも言えないけど。
ただ俺は、これを「マジック」とは思わないし、もっと言えば「叙述トリック」とさえ呼びたくない。「だから何?」と思ってしまった。意外性を演出しようというスピリットは買うけど、どうもトリックのためのトリックに思えて仕方なかった。トリックではあるけど、サプライズもカタルシスも産み出してないと、そう。
イニシエーション・ラブ』における乾くるみとか辻村深月とか、現代本格でそれを実現している作家は本当に凄いと思うね。ネタバレだ。
評価はC。

黒衣の女 (徳間文庫)

黒衣の女 (徳間文庫)