辻村深月『凍りのくじら』講談社文庫

ネタバレ注意。
今回はホントにネタバレ注意。
言わずもがな仕掛けがあって。「ドラえもんを重要なモチーフにした、女子高生の青春・成長小説…と見せかけた、実はジェントル・ゴースト・ストーリー」というもの。郁也の「家庭」との絡ませ方なんかは非常に上手だけど、鮮烈さ、インパクトは前作に及ばない。
やはり読みどころとしては、小説としての人物造形にあるだろう。若尾のあやうさと、どうしようもない愚かしさは、ここまで振り切ればわざとらしさを越えたエンタテインメントだが、主人公・理帆子の自我もまた、負けず劣らず肥大していて。このコの「厭な聡明さ」は、なんだかイヤなトコつつかれてる感じがしてね…。
こういう描写は、「S・F」というキーワードの使い方も含めて、序盤はわざとらしく鼻についたのだが、読み進めるにつれて気にならなくなった。なによりこの作家の持ち味である、丹念な構築力の故だと思う。
あとやっぱり女友達の造形がいいね。特に美也。一瞬俺は『君に届け』でも読んでるんかと思ったわ。その場合立川さんが爽子だから理帆子は梅ちゃんか? …ないないw
評価はB。

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)