是枝裕和『小説ワンダフルライフ』ハヤカワ文庫JA

ネタバレ一応注意。
同名映画のノベライズですが、映画は観ていません。
死者たちの「思い出」にまつわるファンタジー。たとえば「distance」なんか、映像作家としての出自がドキュメンタリにあることをさもありなんと思わせる作家性が窺われる是枝作品ですが、このファンタジー作品においても、死者たちの「語り」にそれは色濃く。
渡辺というキャラクタの「"生"探し」にそれは象徴的なのですが、無名の死者のそれぞれの「生」が丹念に掘り起こされ、語り直され、そしてフィルムに収められていく、という物語の骨格は、夢幻的でロマンティックな霧に包まれてはいても、自身の作家性を暴露しているものだと言えるでしょう。
だがまあ、小説としては凡庸に「いい話」。
評価はB−。

小説ワンダフルライフ (ハヤカワ文庫JA)

小説ワンダフルライフ (ハヤカワ文庫JA)