高橋和巳『憂鬱なる党派』河出文庫

ネタバレ注意。
主人公・西村が、ある目的のために職と妻子を擲ち、かつての革命の同志たちを訪ね歩き、やがて落魄していく遍歴。
革命に挫折した青年たちの心理、その後の生活の思惟が、例によって非常に稠密な文体で描かれる。背景にある戦争と原爆の記憶、それに根差した革命…よりよく生きようという意思と、その蹉跌。それらと折り合いをつけて、どう「戦後」を生きなければならないか、とても切実な問題意識に根差して、ラディカルな社会派小説と言える。
そのラディカリズムは必然、登場人物を孤独に、そして小説を憂鬱にさせる。登場人物が何かを語り、またそうして情を交えるほど、彼らは孤独になり、断絶していく。その憂鬱な情景の浸食力は相当なもので、すき焼き拒絶するとこなんて死ぬかと思ったわ…入院中だったんでヤバいと思って一回読むのやめたもんね。
この救いのない、孤高の物語をどう捉えればいいのか、俺の中にはまだ物差しがないけれど、この時代に興味のある人間にとって、やはりどうしたって避けて通れない作家だとは再認識しました。河出が続々と再文庫化してくれてるので、当然全部読みます。
評価はB。