『シャトーブリアンからの手紙』

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第二次大戦、ナチス占領下のフランス。在仏将校の殺害テロルに対する報復のため、政治犯収容所のフランス人27人が銃殺刑に処された事件を描く戦争伝記。
処刑場でサディスト丸出しのドイツ軍中尉が叫ぶ通りの「テンポ」が、何より戦争の寂寞たる現実を伝えてくれるストイックな作品。副知事やエルンスト・ユンガー*1に託された葛藤も、ギィ・モケ中心とした人質たちの悲嘆や最期の矜持も、物語にドラマティックな抑揚をもたらすこと乏しく*2、ただそこにあるものとして、淡々と描かれていく。ナント事件から、人質の処刑まで、90分程度。
これがエンタメなら、副知事やユンガーを主役に犯人捜しのタイムリミット・サスペンスにでもするんだろうけれど、残念ながらそんな昂揚感も、救いも求め得ない。ただただ寂しく胸の痛む悲劇であり、そして一番のそれは当時の状況下、凡百にありふれた事件であっただろうということです。

*1:こないだゲッベルス演ってたウルリッヒマティスが存在感発揮してたけど、エンドロールに至っても大した役割は果たされなかった。

*2:個人的に釈放間近で嫁と引き離された青年には落涙を禁じえなかったけれど…。