村上春樹『村上春樹 雑文集』新潮文庫

ネタバレ特になし。

単著になっていないエッセィやあいさつ文、スピーチなど、デビュー以来の「雑文」のコレクション。

テーマ性のあるエッセィ集とはまた異なり、様々な印象がよぎって余韻する好著。かの「卵と壁」がエモーショナルに心を打つのを始め、「ビリー・ホリデイの話」はジャズ・エッセィとしてこれ以上はないのではないかと思われる珠玉の一編だし、フィッツジェラルドなどの作家論ももうそれだけで美しく、「風のことを考えよう」はお題に対する180点の回答だと思われた。

一貫したもの、ないし通底するものをなにか求めるなら、小説家として「善き物語」に対する自覚が窺われるのが頼もしい点。この本では特にオウム関連の文章に顕著。読んで(読めて)もいないアンチどもに教えてやりたいよね。

評価はB-。