ネタバレ注意。
福井晴敏による、「∀ガンダム」の小説版。
俺の「∀」知識は「スパロボ」でのそれがほぼすべてなので、ギム・ギンガナムと「ターンX」倒したのが下巻の序盤だった時にはこれから先どうなるんだと思ったのですが、それから先もいろんなことが起きて、SFとしてのスペクタクルはむしろそこにこそある。「ノベライズ」という名付けからは、多分だいぶ逸脱しているのでしょうが。
なかなかのスケールで、破滅的に美しいイメージが乱舞する後半は迫力満点です。福井らしい重厚な文章と精密なディテールは、SFとしての「本格」感を担保しているし、その半面、原作のやわらかい色調の中にあった、ヨーロッパ(…舞台はアメリカだけど)の牧歌的な雰囲気も失われていない。「∀」あるいはガンダムシリーズのノベライズ、という括りではなく*1、単に一編のファンタジーSF長編として、高い達成だと思う。
でもその一方で、悪癖はファンタジーの被膜越しに浮かび上がってもいて。キャラクタ造形は単純で一面的なものを感じるし、反戦反核のメッセージも単純、福井作品にまま見られる「深みのなさ」を感じてはいました。他の作品に比べて瑕疵にはなっていないけど、俺にとっては減点材料だなあ。
評価はB+。
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