大泉康雄『氷の城 連合赤軍事件・吉野雅邦ノート』新潮社

ネタバレ特になし。

一連の連合赤軍事件で無期囚となる吉野雅邦の評伝。

小学館の編集者である著者は、吉野と小学生時分からの幼馴染で、ガチの親友と言える間柄。生誕から青春の日々、やがて事件を経て裁判と獄での生活まで、近くで寄り添ってきた人からの証言と描かれる肖像は精細で、だからこそ中核に口を開ける事件の謎はますます不可解に暗く深い。

障害をもつ兄を思いやる優しい青年と、その聡明にして闊達な妻が、なぜこうなってしまったのか、あるいはなぜ、金子みちよは重信房子にも大道寺あや子にもならなかったのか…胸が締め付けられるようなせつなさと哀惜の中に、人間という存在の不可解を思う…この事件、この時代を考える上で必読の一冊と思います。

「ねえ、ヤス君、わたしたちのしていること、どう思う? バカげていることではないかしら……」
(133p)

初版1998年の時代性かもしれないが、永田らに対する叙述もニュートラルで信頼できた。

評価はB+。