津原泰水『ブラバン』新潮文庫

ネタバレ注意。

1980年とその前後、典則高校吹奏楽部に集う群像と、四半世紀を経ての再結成を描く長編。

『青春デンデケデケデケ』の純朴さとも、「ハルチカ」シリーズ少年マンガ的アツさとも違う、どこか剽げていてシニカルで、センチメンタルでビターな音楽青春小説になっています。津原作品中ポピュラリティはダントツだけど、同時にらしさも出ていると思う。

小説としての基礎体力の部分には揺るぎないものがあって安心して読めるけど、そこから突き抜けるものも読みたかったようにも。良くも悪くも、オトナの小説ではあります。親父がフェンダー買ってくれるとことか、唐木が花束抱えてくるとことか、素敵なシーンはいっぱいあるけど。

あと風俗小説として、時代の感覚でインパクトがあったのが、ジョン・レノンの死に際しての一文。

僕が信じていた世界は、才智や芸術に対してはそれが少々独善的であろうとも寛容で、過大評価するならともかく息の根を止めるはずなどなかった。
(235p)

40年後の今は、どうだろうね…。

評価はB-。

ブラバン (新潮文庫)

ブラバン (新潮文庫)