桐野夏生『日没』岩波書店

ネタバレ注意。

「文化芸術倫理向上委員会」なる政府組織により、問題思想の持主として監禁・矯正される作家の受難を描く長編。

問題意識の内容については、ここまであからさまな表現を(しかも岩波書店で)やらないといけないという切迫感に、うすら寒いような焦燥を感じます。小説として、ディテールや人物造形に粗雑な部分があるけど、それが逆に異様な迫力、空々しくもある独特の雰囲気を演出してもいます。実際、そんな長くないってこともあるけど、一気呵成の一気読みでした。

多田たちが「アスリート」として設定されているあたり、昨今のトップアスリートたちの東京五輪をめぐる立ち居振る舞いが想起されて、断絶の根深さを感じてしまいますね…尊敬したいんだけどな、本当に。

評価はB。

日没

日没