泡坂妻夫『妖女のねむり』ハルキ文庫

ネタバレ注意。
輪廻転生ネタの恋愛ミステリ。
…などというまとめは乱暴すぎて。冒頭は樋口一葉の未発見手稿に端を発して、骨董美術あるいは文芸ものなのかと思わせつつ、あれよあれよと言う間に幻想風味濃厚な恋愛譚となり、紀行趣味もふんだんに漂わせつつ、古今東西の著名な芸術家の生まれ変わりが集うコミューン(!)なんて奇想が炸裂したり、新興宗教で神がかったりと、まさにマジシャン・泡坂御大の手腕に翻弄されまくりの一編。
奇想としては魅力的だし、条理に回収する手つきも納得性が担保されているけど、主眼の一つである恋愛部分に惹かれなかったのが残念。会話とか、作品全体の雰囲気もちょっとこなれてない感じがして。そういう部分まで感性が行き届いてるから、連城三紀彦って人は凄かったよなー。
評価はC。

妖女のねむり (ハルキ文庫)

妖女のねむり (ハルキ文庫)