泡坂妻夫『亜智一郎の恐慌』創元推理文庫

ネタバレ注意。
亜愛一郎のご先祖様が、幕末江戸城の隠密「雲見番衆」として、激動の時代に起きる事件を解決する捕物帖。
泡坂作品らしく、アイデアがケレンと共に凝らされ、時代小説としてのディテールも備わった、質の高い時代本格だと思う。
しかしせっかくいろいろと用意した、雲見番衆たちのキャラクタが充分に生きたとは思われず、また背景の幕末という時代に関しても、どうせなら大政奉還とかその後まで、この連作の中で見せてほしかったなーと思った。
そのあたり、ちょっと中途半端で惜しい印象はあった。作者に構想があっても、なんらかの条件でできなかったとかならせつないけどな…。
評価はＣ＋。

亜智一郎の恐慌 (創元推理文庫)