連城三紀彦『女王』講談社文庫

ネタバレ注意。

主人公の記憶と血統、そして邪馬台国の所在地をめぐる謎が複雑に絡み合う、歴史ミステリ巨編。

…連城らしい華麗な文章や鮮烈なイメージもところどころに見受けられはするが、大半は邪馬台国の謎に魅せられた男たちの妄執と妄想が延々と綴られて、なかなかにハードな読書だった。

登場人物たちの異様な精神そのままに、歪んでバランスの悪い小説…連城三紀彦という作家が日本ミステリ史上屈指の、ほとんどナンバーワンのテクニシャンであることは衆目の一致するところだと思うが、その作家がキャリアの、というか作家人生の最終盤においてこういう作品をものしたということをどう捉えればいいのか、戸惑いしか残らなかったというのが正直なところ。

野心作だし、トリッキィでダイナミックなことは確かだけど、「連城マジック」として称揚されるような洗練性からはほど遠く、俺は高い評価はできない。異様なカウンセリングから始まる冒頭、主人公にある筈のない空襲の記憶があるってツカミはよかったんだけどな…。

評価はC-。

女王(上) (講談社文庫)

女王(上) (講談社文庫)

女王(下) (講談社文庫)

女王(下) (講談社文庫)