樋口有介『風の日にララバイ』ハルキ文庫

ネタバレ注意。
「いつもの」樋口ライト・ハードボイルド。
今回の主人公は研究職をドロップアウトした「発明家」の中年ディレッタント(子持ち)。彼が様々な女性と交流(決してイヤらしい意味でなく)しながら、元嫁が被害者となった殺人事件の謎を追う…というもの。
その梗概だけでなく、微笑ましくもセンチメントが仄かに薫る描写と会話、それぞれに魅力的なクセを立たせた女性たち…中学生から老婆まで。この樋口節はマンネリを超え、もはや様式美の域に達しています。
求められるものはキッチリ仕上げてくる見事な職人芸ですが、ここまで読んできた他の作品に比べると特筆すべき美点に乏しいというのも一方での事実。特に萌のキャラ、あるいはその役割にはなにかもうひとひねり欲しかったなーというところ。
評価はB−。

風の日にララバイ (ハルキ文庫)

風の日にララバイ (ハルキ文庫)