森福都『長安牡丹花異聞』文春文庫

ネタバレ注意。
中国歴史奇想小説、ノンシリーズの短編集。
これまで読んだ中では最も好みに合うものだった。ファンタジィ要素が抑えめなので、プロットのつくりと語り口の巧さがケレンなく入ってくる感じ。まあ駱駝視点で描かれる「殿（しんがり）」とか、ケレンたっぷりの話もあるけど。
でもこの作品集で一際輝くのは女性キャラの造形。表題作の小蘭や「梨花雪」の金鈴の、賢くも可憐で、どこか底の知れなさを感じさせる、神秘的な魅力。
どちらかと言えば歴史小説作家としての男っぽさを感じていた作家だったけど、初めて女性作家らしい美徳を見ました。
評価はＢ。

長安牡丹花異聞 (文春文庫)