ネタバレ注意。
フラメンコ・ダンサ志望の印刷工の少女と、父の介護のためにドロップアウトし、介護疲れで狂気の淵にある元探偵の男が、過去の因縁が絡む事件に挑むハードボイルド。
さすがの打海文三、根本の文章のクオリティと、ロマンティシズムにセンチメントのブレンド、いずれも高いレベルの達成で、安心して酔うことのできるリリカル・ハードボイルドです。ハードボイルドにリリシズムってのは語義矛盾なのだろうか…でもそうとしか言いようがない。
あえてあげつらうとすれば、二人のロマンスの部分はもう一段の説得力が欲しかったかなあと思う。19歳の美少女が中年男に惚れるのに、もう少し心象を描いてもらわないと、願望やろって話になりかねないような。でもこの作品は、それをメルヘン的に受け入れられるだけの香気を湛えてもいるけどね。
評価はB。
- 作者: 打海文三
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/04/25
- メディア: 文庫
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