加納朋子『てるてるあした』幻冬舎文庫

ネタバレ注意。

浪費家の両親の夜逃げで一家離散、ツテを辿って「佐々良」にやって来た15歳、雨宮照代の苦闘を描くビルドゥングス・ロマン。

筆力を信頼している作家だし、前作『ささらさや』はよかった記憶があったが、この作は合わなかった。あらゆる物事を必然性なく嫌う照代を最初から全く好きになれないし、そのせいかファンタジィ要素にも周囲の人々との交情とそこからの成長のドラマにも、もっというと台詞や描写の端々にも、短絡と性急を感じさせられ続けた。照代を好きになれないのも、成長と愛着を感じさせるために「いったん下げておく」という安直さが人格を歪めているせいだろうなと。

エラ子とのほのかな友情(104pの予言のシーン、とてもよいよね)、松ちゃんとの小さな恋のメロディなんかはいい感じだったので、もっとこっちの方を押してほしかったな…なんか大御所ベテラン女優そろえてNHKドラマ撮りましょう、みたいなんじゃなくてさ。

評価はC-。