稲見一良『遺作集 花見川のハック』角川文庫

ネタバレ特になし。
「遺作集」の名の通り、末期癌の床で執筆されたらしい短編集。担当編集の補遺で書かれた執筆の様子など、なかなかに壮絶なものがあります。
もっと長く書かれるはずだっただろう作品があり、得意のファンタジックあるいはナンセンスな展開がやや唐突に感じられる作品があり、あるいは詩のような断片があり。死の床にあっても書き続けることをやめられなかった作家の苦闘がしのばれ、正直痛々しいような場面も。
だけどそんな中でも、上述したようにオリジナルなハードボイルド・ロマンティシズム、自然や野生への尊愛、作家としての持ち味は行間から変わらず立ち顕れていて。
やっぱり、かっこいい作家やと思います。合掌。
評価はB−。

遺作集 花見川のハック (角川文庫)

遺作集 花見川のハック (角川文庫)