『レ・ミゼラブル』

@109シネマズ名古屋
かの『噫無情』、厳密には原作小説ではなくそのミュージカル作品の映画化。
ミュージカル映画ってどうしても大仰あるいは滑稽に思えてしまって苦手意識があるんだけど、同時に名作ミュージカルの映画化に傑作が多いという認識もあって。前者はこないだ観たコレとか。後者はだいぶ前だけどコレとか。
この作品に関しては、やはり物語の主題と骨格の小揺るぎもしない「古典」としての風格と、また長く歌い継がれてきた楽曲たちの安定感によって、安心して世界に浸ることができました。映画として、これもまた確かな傑作との評価に値すると思います。舞台という枠の中に展開された世界をさらに映画の次元に広げるにあたり、人物接写の多い迫真性とキレのある演出、『英国王のスピーチ』とはまったく異なる、しかし更なる充実を感じるトム・フーパーの仕事でした。
キャストでいえば、これも『英国王〜』とはまったく異なる、しかし素晴らしいコメディエンヌぶりを見せるヘレナ・ボナム=カーターがやっぱり素敵だった。彼女を筆頭に女優陣は皆よかったかな。アン・ハサウェイ長回しの迫力、サマンサ・バークス(エポニーヌ)の安定した歌唱、看取りのシーンでのアマンダ・サイフリッドの表情。一方でメイン・キャストたるラッセル・クロウはいまひとつだったような…特に歌い上げてロングショットになるとちょっと間が抜けて見えて。
しかし全体的には、さまざまに見所の多いいい映画でした。楽曲のベストは「Suddenly」、中盤でいきなり泣きました。