花村萬月『紅色の夢』徳間文庫

ネタバレ注意。
期待以上にいい作品でした。既読の花村作品のベストかもしれません。
徳間文庫でこういうのが読めるとは思いませんでした。編集者にもレーベルなりのターゲッティング意識があるのか、裏表紙にもポルノめいて扇情的な内容紹介が書いてあるのですが、これそんなん全然ちゃうやん。
中心的には二つあって、主人公の姉妹の互いに対する想いと、姉を表現の主題とする妹の「芸術」。どちらも濃密、かつ鋭利に描かれていると思います。こと花村萬月ですから、文章のスピード感や丸み、その中に描出されるエロティシズムにも高いクオリティがあります。エンタテインメントと純文学の、高い次元での融合であると言えると思います。以前他の作品で芥川賞取った時に、「なんで直木賞じゃないんだ」みたいな言説があったと記憶していますが、この作品を見てるとやはり芥川賞を取るべき作家でしょう。むしろ慧眼。
「芸術小説」としても優れていますが、なにより「美大小説」として、これより優れたものがあったら教えてほしいと思いました。
評価はB+。

紅色の夢 (徳間文庫)

紅色の夢 (徳間文庫)