花村萬月『ゲルマニウムの夜 王国記1』文春文庫

ネタバレ一応注意。
「1」は本当はローマ数字だけれど。
…そんなことはどうでもよくて、この小説はすごくよかったということが書きたいのです。
キリスト教施設で育った孤児の少年が、長じて神の園に舞い戻り、狼藉の限りを尽くすお話。花村萬月らしいスピード感とヴァイオレンスに溢れてはいるが、キリスト教神学が中心的なテーマとなっていて、哲学・倫理学的な要素も織り込まれ、読んでいて非常に理知的な印象があって好ましいです。何書かせても巧いなこの人は。
主人公・朧にも、作品世界全体にも、「王国」の名を冠するに値するスケール感と魅力と底知れなさがあって、次の巻・展開も非常に楽しみです。
芥川賞ぐらいはまあ、当然と言えるのでは。
評価はB+。

ゲルマニウムの夜―王国記〈1〉

ゲルマニウムの夜―王国記〈1〉