フジファブリック 『CHRONICLE』

4th。
まだ4thか。なんか意外。
で、なにコレめちゃくちゃせつないんですけど。
≪言葉では伝えられない 僕の心は臆病だな/怖いのは否定される事 僕の心は臆病だな だな≫(「バウムクーヘン」)、≪君は僕の事を 僕は君の事を どうせ忘れちゃうんだ そう悩むのであります≫(「クロニクル」)、≪神様は親切だから 僕らを出会わせて/神様は意地悪だから 僕らの道を別々の方へ≫(「エイプリル」)、≪欲を言えば 欲を言えば/君の声が聞きたいんだ≫(「タイムマシン」)、≪あなたはいつの日も 例えば雨の日も/僕を悩ませるのでしょう/季節が変わっても 何か手に入れても/弱い生き物なのでしょう≫(「ないものねだり」)…。
枚挙に暇がないけど、こんな無防備なセンチメントは、これまでのフジファブリックには存在しなかったように思う。物語や楽曲の世界観にうまく回収されたり、諧謔と同居していたように思うのだけど。挙げたようなセンチメンタルな曲だけでなく、このアルバムの大きな二本の柱になってるハード系の曲も、ささくれだってノイジィで、これまでの彼らの、ひねくれて、でも質の高いポップセンスとは相反する手触りが感じられる。
センチな曲はそれはそれでいい。美しいメロディとせつない詞、というのはソングライタ・志村正彦の売りの一つだから。だけどこのアルバムには、かつて俺が魅せられたフジファブリックの大きな魅力である、独特のサイケ感が感じられない。すごく聴きやすいし、非センチメンタルな「Sugar!!」や「All Right」あたりもかっこいいとは思うのだけど、俺はどうしても『FAB FOX』や『TEENAGER』を愛してしまうなあ。
アルバム制作の前段階で、志村は結構シリアスな状態にあったらしくて、そうした先入観が素直にこのアルバムを聴くのを阻害しているかもしれないけれど。いつも飄々としてて、そんな感じには見えないだけになおさら。
…でもまあ、質の高いロック・アルバムだとは思うのだよね。カオティックでありながらロマンティックな、アルバム・トータルとしての世界観は貴重だとも。

男の子に生まれてきたのだって
女の子に生まれてきたのだって
ないものねだりは日常茶飯事
ほんと笑うよね
(「ないものねだり」)

結局ないものねだりだってさ。ほんと笑うよね。

CHRONICLE(DVD付)

CHRONICLE(DVD付)