『曽我部恵一BAND』

セルフタイトル。
ソロ以降あまり熱心に追いかけていなくて、これも頼んでいないのに貸してくれたものなので、ナンバリングも定かではありませんが、でもこれはとてもいいアルバムだと思います。
やはりセルフタイトルにでもする以外なかったであろうと思われる多彩さ。しかし散漫さは感じさせず、ポップ/ロック・アルバムとして質の高いままに聴かせる全15曲の長丁場。
時折聞こえるローファイな音とか、ノイジィにさえ聞こえるヴォーカルのブルージィなニュアンスは、やはり違和感が拭えないところもあるんだけど、メロディも詞もやはり抜群の流麗さ。日本屈指のソングライタとしての力量を見せつけるグッド・ソング揃いです。
フラワーカンパニーズ「深夜高速」を思わせるエモーショナルなロック・ナンバー「クリムゾン」、続いてダンサブルな「ロックンロール」*1、やがて哀しい社会派フォークロック「街の冬」、転じてリリシズムの極地たる「月夜のメロディ」*2、という中盤の流れがとても好きでした。
「ポエジー」の詞もよかった。あまり大上段にふりかぶった名詞は少ないので、たまにこういうのをポエトリィ・リーディング気味にやられると効果的ですな。

街は知ってる、ぼくたちの情けなさや優しさを
だから今日もドアを開けて
メロディが出たり入ったりしてるんだ
瞳を閉じた女の子 その睫毛の静けさよ
燃えるような場面を内に閉じ込めて
遠く煌めく海とか
落ち葉を燃やすガソリンの匂い
もうじき太陽が出るだろう
そしてだれもそのことを知らない
(「ポエジー」)

曽我部恵一BAND

曽我部恵一BAND

*1:サビの詞、なんつってんの? 《見つめるといつも脚》?

*2:「夜」が「月夜」になるだけで、エロ歌謡から泣けるバラードになるもんだねw