GRAPEVINE 『真昼のストレンジランド』

11th。
これはすごくかっこいいアルバムです。前作より全然聴いてる。
音の構築性…メロディとグルーヴ、ヴォーカル含めた各楽器のフレージング…はやはりすごく緊密で精緻なものだと思うのですが、一聴受ける印象は異なっていて、なんか酔いどれミュージシャンがなんとなく集まって、咥え煙草で楽しそうに演ってる、みたいなのが素敵。伝わるのだろうかこの感覚…。
「Silverado」「This town」という劈頭二曲は象徴的、ユルく始まって、疾走感のある曲ではないのに、ピーク時の爆発力とカタルシスはまさにロック・アンセム。ギターソロも「アニキかっけー」言うてしまいます。
こうした大らかなスケールを感じさせる前半から、「おそれ」「真昼の子供たち」「風の歌」といったメロウ/センチメンタル・サイドの後半へと至る流れも見事、そして今回のメロウ/センチメンタル・サイドに関しては、あまり大上段に振りかぶったものではなく、抑制の効き方がとても素敵です。どの曲も、ふとした瞬間に泣ける。「真昼の子供たち」という曲が僕はとても好きで、別にとりたてて何がどうって曲でもないと思うんだけど…詞にキラーフレーズがあるわけでもないし、サビなんてむしろ抑制されてるし…、とにかく聴いてて、「完璧」だと思う一曲でした。「イントロがいいと即名曲説」、ここでも実証されましたね*1。「風の歌」も、詞の完成度、亀井氏さすがのメロディ・メイカーぶり*2、ブルージィかつセンチメンタルなギター、まったく隙のない出来に感嘆します。
まあとにかく、バインについてはずっと言ってきたことだけど、ロック・バンドとしての成熟、混沌としていながらも洗練された音楽性、そうした彼らの音楽表現への信頼感が十全に満たされる、まさに充実作と言えるでしょう。

真昼のストレンジランド

真昼のストレンジランド

*1:今までの二大実証例、ラルク「flower」とラッド「最大公約数」に割って入る出来。

*2:しかし「こんぐらいいつでも書いたるわ」ぐらいの貫禄。