米津玄師 『diorama』

1st。
JAPANで山崎洋一郎が推してて気になってたアーティスト。ボーカロイドのクリエイタに出自を持つ弱冠21歳のシンガーソングライタ。
ええと、非常に良いので、最近コレばっかり聴いてます。flumpool(笑)とか推し始めて以来*1JAPAN買わなくなったけど、こういうことがあるから読まないわけにもいかず。
まず、音像が魅力的です。ギター・ロックの疾走感を基調に、出自を窺わせる様々なギミックが、楽曲に表情と彩りを与えています。ヴォーカルも21とは俄かに信じ難い成熟、男性性のセクシィさとやさぐれ感が適度にブレンドされ、また青臭さも失われていない、世界観的に絶妙な声。BUMP*2tacica*3直系、つまり俺の好みではありまして。
『diorama』というタイトルの通り、ある「街」を舞台に、そこでの様々な物語や生活、感情を描きだすというコンセプトのアルバムです。詞世界はその物語を映しだす具象性と、アーティストとして、あるいはアルバム・楽曲のキャラクタとしての抽象的な表現性の間で、非常に面白いバランスを保っていると思います。

この街は この街は
生まれてきたままで 意味もなく
愛されたい 愛されたい
そこらじゅうに散らばった夢のように
細やかな日常だけが残る
(「抄本」)

「街」でスケールを聴かせて後の高速ロック「ゴーゴー幽霊船」とか、「あめふり婦人」「ディスコバルーン」の歌謡ロック二連打からのセンチメンタル・アンセム「vivi」とか、「乾涸びたバスひとつ」や「心像放映」のイメージの豊かさとメロディのエモさの見事な相乗、それぞれにキャラが鮮やかに立った楽曲が14曲も並んで、しかし全体としては確かに一つの世界観を描いていると感じられます。劈頭「街」とラスト「抄本」でその世界を包み込んで、また真ん中にあたる「vivi」にはそれぞれの物語の断片が顔を出す、そうした構成の企みも心憎い。
これだけ才気煥発、かつ完成度の高いアルバムというのはそれだけで稀有であるのに、21歳のシンガーソングライタの1stだっつーんだからビビる。ボーカロイドっつー文化をまったく通ってこなかったけど、それは音楽にとって、確かに一つの革命であったのかもしれず。そうしたことを思わせるだけの力のある作品です。
ベストは「vivi」と「乾涸びたバスひとつ」は甲乙つけ難く、一段落ちて「恋と病熱」「心像放映」あたりも偏愛。でも詩作は「心像放映」のサビが好きだな。

きっとまたあなたは優しくなって
私に花を贈るのだろう
それでも私はさびしくて
また涙を裂いて笑うのだ
凛と澄む心が一人になって
あなたと違う私を知る
がらくたみたいな心でも
何かプレゼントできるかな
(「心像放映」)

diorama

diorama

*1:いや、いろいろあるのは分かるんだけど。

*2:実際音楽のルーツはバンプらしいよ。

*3:でもこれ、正直食われるよな…。