赤川次郎『マリオネットの罠』文春文庫

ネタバレ注意。
初期の傑作と名高い作品の新装文庫版。
イメージの強いユーモアはなく、女性サイコパスを中心に据えた、一貫してダークなサスペンス・ミステリ。多分この作品の高評価の中心であろうトリッキーな操りプロットは、正直よくあるテだと思ったし、途中から読めてしまった。むしろ森深くの洋館(隠し部屋付き)や精神病院の解放病棟(図書館付き)などコロコロと変わる魅力的な舞台設定と、そしてなにより非常に平易で読み易い文章といったリーダビリティを、非常に好ましく感じながら読みました。やはり国民作家としての基礎体力は、作品のカラーが変わってもしっかりしたものです。思えば本格的に新本格を読み出すまでは、ひたすら三毛猫ホームズと「華麗なる探偵たち」(だっけ?)シリーズを読んでいたなあ、と、一抹のノスタルジィ。
読み易い、とは云いながら決して「安い」という印象ではないんですよね。冒頭の「赤」の色彩イメージも非常に鮮烈で、読みどころの多い佳作だと思います。
作品の評価はB。

新装版 マリオネットの罠 (文春文庫)

新装版 マリオネットの罠 (文春文庫)