柳広司『ジョーカー・ゲーム』角川文庫

ネタバレ注意。
たまには読みたいものを。
第二次大戦下、日本軍の秘密諜報機関「D機関」の暗躍を描く連作ミステリ。
柳広司のブレイク作、さすが知的に刺激のある作品である。リーダビリティはもちろん、決して描写に多くの行を割いているわけではないのに、D機関の面々、その中枢たる結城中佐にも、存在感と魅力が感じられる。
総じて満足のいく作品ではあるし愉しんだのだけど、ミステリとして見れば若干小粒ではあるし*1、柳作品の中ではキャッチーでこそあれ、とりたてて優れたものとは思いません。俺ぁ『はじまりの島』のが好きだよ。
中で私的ベストは「ロビンソン」。自白剤に対する耐性、「救援無電」といったあたりに、「スパイもの」としての必然が感じられた。
評価はB。

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

*1:スパイものとしては逢坂剛クリヴィツキー症候群』のが興奮した。