ネタバレ特になし。
「戦後日本のナショナリズムと公共性」についての言説の生起と変遷を探る研究書。
丸山眞男、竹内好、吉本隆明、江藤淳に鶴見俊輔と、錚々たる知識人たちの思想が、往時の社会変動と共に描かれる。ワタクシのような無学の徒には、それらを通覧できるだけでありがたい本でした。そこから何か発展的に語るなんてことは手に余ります…「1968」についてならともかく…。
基本的には冷静に、クレバーに文献を繙いていく小熊史学の手つきだが、ところどころそれを逸脱してシンパシィやその逆が顔を出す瞬間があって、そういうところにエモさを感じた。杉山龍丸(久作長男)の回想(58-59p)、国民的歴史学運動の終焉(352-353p)、1950年の転換の趨勢(第十一章すべて)、岸信介評価(511p)、ベ平連の思想と行動(780p)など。
人間の知的営為というものが、ダイナミックで美しいなどと言ってしまえば空疎だが、その巨大な蓄積に触れさせてくれる大仕事。
記録のみ。