小熊英二『1968』新曜社

ネタバレ特になし。
1960年安保闘争から、1972年の連合赤軍事件とウーマン・リブまで、日本新左翼史にとどまらない「あの時代」を、様々な資料を駆使して描き、論じる、初めての包括的学術研究。
約三か月間、土曜日の午前中を近所の喫茶店に籠って、この大著を読むのに費やしました。この圧倒的量感を支える資料の詳細と膨大は、俺みたいに興味を持った後世の人が、同時代性、その精神性を感じるために非常にありがたい仕事。
メインの興味であった連合赤軍についても、他の様々な本やコメントよりかなり矮小化された解釈をしていて、個人的にはすごく説得力があった。一方でベ平連の事務局長など、政治運動家として著者が評価していると思われる人物については、その列伝的な面白味もあって。
繰り返し語られる結論部分、「現代的不幸」「アイデンティティ・クライシス」に対するカウンターって話は、頻出の割に面白味に欠けるようにも思ったけど、そもそも結論の斬新さを読ませるような仕事でもないだろうし、俺にとってこの大著は、その「詳細な堆積」から何ものかを汲み取るべきもの。
死ぬほど線引いて付箋貼ったわ。
評価なし*1

1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景

1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景

1968〈下〉叛乱の終焉とその遺産

1968〈下〉叛乱の終焉とその遺産

*1:畏れ多いので(いまさら)。