『蘇える金狼』

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冴えない経理部員を隠れ蓑に、裏では凄腕アウトローとして会社の乗っ取りを図る主人公・朝倉哲也の活躍を描くピカレスク・アクション。
画も音楽も芝居もアクションも、すべてが徒に大げさでわざとらしい、いい風に言えば猥雑なエネルギィに溢れた、イメージそのままの角川映画。鼻白む場面は多かったけれど、その中でも主演・松田優作のカリスマ性と存在感は屹立して、作品に一本筋を通して感じられました。脚本レベルではおそらく何も考えられていないだけではないかと思われる主人公の行動原理の不明確さも、松田優作によって不条理の神秘性を与えられていて…むしろ演出がそれを邪魔していると感じられる場面もあって。ラストシーンに至る終盤の流れも、主演俳優に多くを負いすぎではないかと感じられたし。
もちろんそうした印象も含めて監督の手腕ではあるのでしょうが、アテレコの酷い露骨さとか、アクションシーン、セックスシーンの滑稽さとか、もっとちゃんと演出してほしいなーと同郷の巨匠に思う部分はあった。助演陣も酷い芝居してるよ、ヒロイン風吹ジュンも結構なもんだし、ド端役だけど岩城滉一には失笑したわ。
松田優作を観るためだけの映画。異物感すらある、これだけの存在感の俳優を映画の枠に嵌めようとするなら、それはそれで正しいあり方ではあるのでしょう。

蘇える金狼