中島らも『酒気帯び車椅子』集英社文庫

ネタバレ注意。
久々のらも小説。ビジネス上のトラブルから、ヤクザに妻を目の前で凌辱殺害され、娘を誘拐され、自らも暴行により両脚を失った主人公が、車椅子をハードに武装化してヤクザを皆殺しにする、というお話。
エンタメ特化のパルプ・フィクションとして、ストーリィのテンポとヴァイオレンスだけを読めばいいのだろうと理解してはいても、主人公にまったく感情移入できないのがシンドかった。このバカの愚劣なマッチョイズムがすべての原因でありながら、この反省のなさはどうだろう。悪の権化たる作中のヤクザの暴力より何より、コイツの独善性がたまらなく不快だったわ。そういう人物造形なんだろうけど。
この程度の小説が遺作ってのはちょっと寂しいけど、それもまたらしいところではあるな…。
評価はC。

酒気帯び車椅子 (集英社文庫)

酒気帯び車椅子 (集英社文庫)