矢作俊彦『さまよう薔薇のように』角川文庫

ネタバレ一応注意。
横浜を舞台に、路上駐車場業(?)を営む主人公が巻き込まれる事件。三編収録のハードボイルド・シリーズ短編集。
上記のは厳密には違うんやけど結果としては間違っていない、主人公の職業設定が面白い。そこから派生して事件に巻き込まれていくプロットも、いい感じにオフビート。歓楽街がメイン舞台で出てくるキャラもお水関係が多く、他の作品に比べてスノッブの毒気が抜けています。

「あの女は川に落ちた花と同じさ」と彼は言い、背を正した。
「取ろうとすりゃあ水にはまる。橋の上から見てりゃあ浅瀬に止まって気をひく。――ただ、あっちこっち流れてくだけだっていうのにな」
(表題作、144p)

比喩表現なんかもだいぶ卑近になっちゃって。ハードボイルド・アーティスティックはかなり抑えめだけど、俺は二村シリーズよりこっちのが好きだな。

「どうしたのよ?」エレヴェータから化粧の濃い娘が顔をのぞかせた。山口小夜子を気取っているのはすぐ判ったが、寒ブリサヨリを気取ろうというようなものだった。
(「キラーに口紅」、179p)

やっぱ、読みやすいのがいいと思う。
評価はC+。

さまよう薔薇のように (角川文庫)

さまよう薔薇のように (角川文庫)