横山秀夫『影踏み』祥文社文庫

ネタバレ注意。
深夜に民家に忍び込む職業泥棒…「ノビ師」の主人公が、二年ぶりに出所して巻き込まれる事件を描く連作。
横山秀夫らしい、しっかりと計算されたプロットと伏線の妙が味わえ、主人公を取り巻く裏稼業の世界が醸すピカレスク・ロマンの風合い、そうした魑魅魍魎の中にいて筋はきっちりと通す主人公のハードボイルド性、その造形に危うさと陰影を彫刻し、小説に軽みを加えてマッチョイズムから救っている啓二の存在と、様々な魅力が連作としての物語をドライヴしていく、さすが質の高いミステリです。
久子の造形にだけ若干の物足りなさがあったけど、女性キャラの立ちをまで求めるのは贅沢かな…。
評価はB−。

影踏み (祥伝社文庫)

影踏み (祥伝社文庫)