酒見賢一『後宮小説』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
架空中国王朝の後宮を舞台にした歴史ファンタジィ。
「架空中国王朝」という舞台立ての、ファンタジィ小説との相性の良さが十全に発揮されて、とても愉しい小説です。後宮に突貫する主人公の少女、銀河の天真さとか、トリックスター渾沌の自由でカオティックな人格とか、江葉の究極的なマイペースさとか、登場人物の魅力もその中で躍動してる。
メインテーマの性哲学は、「後宮」という舞台立てと不可分なのは分かるけど、作品の中ではオフビート感の演出に止まってしまっているような印象はあって、これがさらにダイナミックに絡んでくるようならもっとよかったなー。でもラストの処理なんかも小粋で、快作だったよ。
評価はB。

後宮小説 (新潮文庫)

後宮小説 (新潮文庫)