古処誠二『フラグメント』新潮文庫

ネタバレ注意。
地震でマンションの地下駐車場に閉じ込められた少年たちの間に惹起される殺人…てことでコレ『少年たちの密室』やったんやね。ちょっと読んで気づいたんで結局読んだわ。今一つ必然性の感じられないさらに抽象的な改題で、原題のダブルミーニングも失われてしまったように思うけども…。
で、その特殊なシチュエーションと、その中でのロジックを見せるべき*1作品なのに、高校生の青春悲劇演出に変にテンション上げすぎて、人物造形や描写がそれについてきてないもんだから相当気持ち悪いことになってて、その狂騒に引っ張られてロジックや伏線もとっ散らかって、残念なことになってしまっている小説だった。ノベルスで初読の時はちょっといい印象だった気がしてたんだけどな…錯覚だったかな。
気持ち悪いシーン、描写、キャラのテンション挙げたらキリがないんだけど、そもそも被害者のガチクズが同じ空間に存在してる高校生活ってものに全くリアリティを感じられない。せめて中学だったら、と言うか中学にしなかった意味が分からない。
せっかく魅力的な特殊状況本格になり得た素材を、テンションの先走りで台無しにしてしまった、その感性はやはり本格の書き手ではなかったってことだな…この後一気に戦争モノにシフトした感じやし。
評価はC(再読)。

フラグメント (新潮文庫)

フラグメント (新潮文庫)

*1:靴下からの同定のあたりはちょっと面白いシンプルさなんだけどな…。