石持浅海『顔のない敵』光文社文庫

ネタバレ注意。
対人地雷をテーマに据えたミステリ連作。
他にない題材がゆえのプロット、ロジックに目新しさはあるけど、やっぱこの人独特の歪んだ倫理観*1と心理描写がどうにも…。
この題材であれば、人間ドラマを絡めて本格としてのカタルシスが演出できるだろうし、実際その方向性に色気がないわけではなさそうだから、なんかもったいないなあという読後感の作品ばかりだった。
こんな歪な正義感を披露するんじゃなくて、もっとエモーショナルに感動させてほしい、なんて思いは、本格読みとして浅ましいものかもしれないが。
評価はC+。

顔のない敵 (光文社文庫)

顔のない敵 (光文社文庫)

*1:表題作のラスト、《「カンボジアの未来に、乾杯」》(116p)じゃねーよ。