東野圭吾『片思い』文春文庫

ネタバレ注意。
社会人になって十年を経た大学アメフト部のチームメイトたちが、仲間が抱えたある「秘密」と、それが中心となって起こる殺人事件に巻き込まれる、サスペンス・ミステリ。
六百頁の大部を読ませるリーダビリティはもちろん、LGBTの取り扱いについても、こないだの愚作とは比べるまでもなく誠実な(つーか当然の)向き合い方がされていて、好感は持てた。一方アメフトの取り入れ方はスノッブな感じがしたし、プロットじたいはあまり面白いと思えるものではなかったが。
LGBTの人々が直面させられる苦境の一方で、主人公夫妻のディスコミュニケーションはそれが避け得るものである故に愚かしく、胸が塞がる暗鬱だが、その分「男の世界」という中心プロットを引き立ててもいた。視界の伏線なんかあったかな…と思いつつ、読み返す気にはならないのだが。
評価はC。

片想い (文春文庫)

片想い (文春文庫)