ネタバレ注意。
スターリン体制下ソ連、旧職の国家保安省に追われながら、44人の子供が犠牲となった連続殺人を追う、元捜査官レオ・デミドフの苦闘を描く長編。
面白かった。上下巻700頁を超える大部だが、正に巻措く能わざる、というリーダビリティだった。
「理想国家」ソヴィエト連邦の歪んだ論理と、その中での下卑たパワーゲームの閉塞感に支配されたサスペンスとして、飢餓の極限状態から生まれた人間ドラマとして、夫婦間・親子間の複雑な心理の綾を描く家族ドラマとして、すべてを過不足なくまとめ上げた手腕は見事。
チカチーロ事件が単なるモチーフで、鬼面人を威すレベルにとどまっていること、そして解決とそこに至る道筋が若干メルヘンチックなところが残念だが、まずは一流のストーリィテラの仕事と言えるだろう。
最初はロシア人名にビビってたがなんてことはなく、平明な訳もリーダビリティに貢献してた。
評価はB。
- 作者:トム・ロブ スミス
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 文庫
- 作者:トム・ロブ スミス
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 文庫