S.キング/朝倉久志(訳)『ゴールデンボーイ』新潮文庫

ネタバレ注意。
こちらも差し入れでいただいた、キングの中編集(二編)。
刑務所のリタ・ヘイワース」は、言わずと知れた『ショーシャンクの空に*1原作。どうしても映画とカブせて見てしまうので、エピソードの不足とか、「骨格」感を感じてしまうけど、その分テンポは抜群、映画の印象よりちょっとワルい感じのレッドの語り口も巧みで、さすが力のある物語をあっという間に読ませてくれます。ラストは完全にバスに揺られるモーガン・フリーマンの画浮かんで涙ぐんでたので、映画の感動と完全に不可分かと言われると心許ないところだけど。
ゴールデンボーイ」は、主人公の少年が興味本位でナチス逃亡犯の老人に近づき、脅迫しながらやがて奇妙な共犯関係を結ぶお話。こちらも抜群のリーダビリティで、長編に近い分量をぐいぐい読ませる。トッドは見事なクソガキだけど、その好奇心のありようには凄くシンパシィがあって、なんだか他人事と思えなかったなw 「リタ・ヘイワース」の方とは真逆の凄惨な結末だけど、その必然性の説得力と、そこに至るまで二人がじわじわと追い詰められていく状況の積み重ねは、さすがホラーの帝王の筆力と思いました。
評価はB。

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

*1:ベタすぎて気恥ずかしいけど、洋画におけるベスト映画なんだな…特にブルックスのくだりは、俺の「哀」の感情をこれ以上なく喚起する。