角田光代『空の拳』日本経済新聞出版社

ネタバレ注意。
ボクシング専門誌に配属された新米編集者(実は文芸志望)の主人公の視点から描くボクシング小説。
自身ジム通いしてるだけあって、丹念にリアリティをもって描かれているとは思う。だけど正直、それだけの小説だなあという感じだった。ヌルいというかおとなしいというか、あれコイツもっとハネるんじゃねえの、とか、この人なんかウラあったんじゃねえの、という感じで、なんか物足りないというか、未消化。
ただ、多分そんな外野の勝手で下世話な期待とは真逆に、《おもいっきり楽しかった》という言葉に端的なところの、ボクシングというスポーツのシンプルさ、清々しさというものを表現したかったんだとは思う。作中何回か語られるこの言葉は、理屈じゃなくすっと入ってくる「いい言葉」になっていて、その意味では成功をみているのかな。
評価はC。

空の拳

空の拳