ネタバレ一応注意。
文章と絵を生業とする主人公と、彼が過去と現在を通して関わる様々な人々を通して、「人間」を描く長編。
序盤は『スロウハイツ』をシニカルにしたみたいな話で、ドラマティックで下世話で愉しかったし、後半、影山との対話や沖縄編もそれぞれに見どころがあって、豊かな小説だと思います。
《なんとなく東京の表層だけをかすめ取りながら》とか面白い表現もいろいろあって、めぐみとのジョン・レノンとかめっちゃヴィヴィッドでいいシーンだし、だからこそその後の指咥えるシーンのエロさがヤバかったり、カスミの夢幻的な存在感も印象的だし、影山がナカノタイチにぶつける罵言も至言に満ちていて。
…なんか感想もまとまらないけど、確かに長編小説としてのまとまりという点では乏しい。しかし作品のあちこちに顔を出す表現のキレや、それをささえてある作家の真情に引き付けられて読まされる作品。俺は『火花』より好きですね。
評価はB。
- 作者: 又吉直樹
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2019/10/10
- メディア: 単行本
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